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社会を見る眼
 「おんぶ」―同じ世界を見ながら―
  第66回 <2003年11月>

ロゴイメージ 先ごろ、ほんとに久しぶりに赤ちゃんを背中におぶっているお母さんを街で見かけた。ああそうだった、みんな日本人はこうして育ってきたんだなあ。大きなお姉ちゃんが、弟や妹をおんぶさせられることもあった。

 いまは、おんぶとは逆に母親の顔と向き合って抱かれる状態か、ベビーカーに乗ってゴロゴロ後から押されて育つかである。

 三好春樹さん(生活とリハビリ研究所々長)も、おんぶされた赤ちゃんは、母の背中のぬくもりの中で、母と同じ目線で同じ世界を見ながら育つ。それがいいと語っていた。

 まさかいま、おんぶをして会社で仕事は出来ないが、むかしの母親は背中に赤ん坊をくくりつけておぶったまま家事をこなしてきた。背中の子は、否応なしに母が生きている世界を一緒に見て生きることになる。そこで子どもは、母のつらさも歓びも、背中のぬくもりを通して自然に受けとめてゆく。そしてやがて母の背中を離れて独り立ちしてゆく。それからまた、先輩の背中に育てられて同じ世界を見て生きるようになる。

 人は、ときに顔と顔を見つめ合って語り論じ合うことが大切である。しかし、ときにはただ黙ってその隣りに座り、同じ遠い景色でも眺める。「きれいな雲だねェ」くらいの言葉でいい。そこに安らぎが通いあうときがある。
 同じ世界を見ていると同じ目が与えられてくる。同じ世界に包まれているから……。 

(邦)


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