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社会を見る眼
 ヒトゲノムの解読完了
  第64回 <2003年7月>

ロゴイメージ この4月、ヒトゲノムの解読が完了したと新聞が報じていた。

 10年くらい前にお会いした中村桂子先生(生命科学者)は、ヒトゲノムの解読が終わるのはまだ何十年もかかると言われていた。科学者の解析力はすごいスピードである。遺伝子の研究が進むと、ヒトも他の生物も本質的にはあまり変わりがないことが解ってきたそうである。ヒトとマウスの遺伝子の数はほぼ同じという。

 その中村先生がある小学校で、「遺伝子の数や配列はちがっても、ヒトもゴキブリも遺伝子であるに変わりはない」と話をされた。ある生徒が手を挙げて叫んだという。「ボクはゴキブリと一緒じゃいやだ!」。なるほど面白いなあと、そのときヤケに感心したことを思い出す。

 それにしても、なぜヒトがヒトなのか。ゴキブリがゴキブリなのか。そこまで遺伝情報のはたらきが解明されたのか。もし解明されたら、人間だれでも必ず「自分が自分である」と自分に納得できるだろうか。ゲノムの解読だけで人間そのものを解明できるわけがない。人間は、なぜこんな自分なのか。いつ自分が自分になれるかという深い問いを抱えている。ボクもゴキブリと同じいのち。だけどゴキブリじゃないのだ。

 仏教は、いのちあるものすべてを衆生という。ヒトも衆生のひとりにすぎない。しかも自分はかけがえのない自分である。そのことを仏陀は、2500年前に既に直観した。

(邦)


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