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社会を見る眼
 阪神大震災に憶う
  第15回 <1995年5月>

阪神大震災が起きてから、早や百日が過ぎ、交通などライフラインはかなり復旧しました。しかし、数十秒の揺れが、人々の生死を分け、五千五百人もの生命を奪い、また、広大な地域を焼き尽くして、最高時には二十万人もの避難所生活者を生んだだけに、復旧が軌道にのるには、まだ、かなりの時が必要のようです。
 オーストラリアの精神科医で、大学教授のビバリー・ラファエルさんによると、「報道が沈静化し、ボランティアの波が引くころから、悲嘆、苦悩、絶望、そして病的な精神状態が訪れる。災害が被災者にもたらす、最も重大なものは、家屋の損失など量的な被害よりも人の心の崩壊だ」(朝日新聞)そうです。そして現地ではすでに精神的悩みを訴える人たちが増えています。

 しかし、その一方で、大震災を通して「価値観が変わった」とし、従来のただ忙しく生きてきた生き方に疑問を持つ人たちも多くみられます。朝日新聞によると、神戸市東灘区の本山第二小学校野球チームの主将をつとめる高木勝悟君(11歳)は、画用紙の切れ端に友だちと、「ぼくらはみんな生きている。生きているだけでしあわせだ」という詩を書きました。先生がそれを避難所の壁に張ってくれたそうです。その父は、家族と夕食を共にすることのない会社人間で、勝悟君の野球をみたこともなかったが、「今後は勝悟の試合を見に行きたい」と語っています。勝悟君の詩は、・生命の尊さ・・生きている喜び・をうたっています。父の変心は、ただ忙しく働くだけが人生でないとし、・生まれた意義・を考え、新しい目覚めを生み出す発言ではないでしょうか。

 また、崩れ落ちた家屋の下にいる母親や友人の声を聞きながら、迫りくる火勢のため、助けの手を出せなかった人が、テレビの前で「ただ、ごめんなさいという以外、言葉がない」といっておりましたが、この発言は、己(おのれ)の、また人間の・無力さ・を自覚した言葉です。・歎異抄(たんにしょう)・を憶(おも)い出します。大震災の体験を通して得た実感は、これらの人々の、今後の人生の原点として生きてくることでしょう。
(昭)










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