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 人生の拠点
狐野 秀存(大谷専修学院指導主事) サンガ第85号 <2007年1月>

イメージ バーチャルリアリティという言葉がはやったことがある。「仮想現実」ということだ。現実にはないのに、あるかのような空間や物を仮に作る。何かの理論の確かめや実験をするときには大いに役立つ。

 しかし、ことがいったん人間の心にかかわると、とんでもない落とし穴がある。「ない」にもかかわらず、あたかもあるかのように空想したり、「ある」にもかかわらず、あっても知らぬふりをしたり、見て見ぬふりをしてしまう。仏教は明快に、あるものはあり、ないものはないとする。「如実知見」の智慧である。

 先日、久しぶりに田舎へ帰った。かつては雪が降れば、道は閉ざされ、人々は家の中にじっととどまっているしかなかった。何かをしたいけれども、断念せざるを得なかった。その断念の深さが、自分自身や人生について、否応なく思索せずにはいられない、真宗の土壌を育んだと思う。今はどんな道もブルドーザーできれいに雪が除かれ、思うようにどこへでも行き、仕事ができるようになった。ありがたい科学技術の恩恵である。
 が、本当に行きたいところへ行き、したいことができるのか。自分の思うように人生を設計できるのか。現実は我が身の事実から一歩も離れることはできない。

 バーチャルでない、たしかな生の実感をどうしたら得ることができるのか。親鸞はその本当の人生の拠点を「煩悩具足の凡夫」と言い切っている。


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