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武田 定光(親鸞仏教センター嘱託研究員) サンガ第82号 <2006年7月>

イメージ 「靖国問題」あるいは「竹島問題」の場合もそうだが、日本が近隣諸国と摩擦を生じたとき、日本人は民族主義に傾いていく。事情は他国も似ている。日本人が、日本人独自のアイデンティティーを確認しようとするとき、どうしても神道的なものへ帰ろうとする。これは島国日本の特性なのかもしれない。海岸線が国境であるような国は、どうしても国家体制と国(くに)といわれるものを分けて考えにくい。あらためて日本人のアイデンティティーをどこに立てるのかということが問われる。これは新しい問題ではなく、古代日本への仏教伝来のときからの問題である。物部氏は日本古来の神々があるのに、なぜ多民族が信じている仏教を導入する必要があるのかと訴えた。一方、蘇我氏は将来における東アジア圏における日本の立場を考え、物部氏を滅ぼし仏教を受け入れた。しかし現代の日本人のアイデンティティーを考えたとき、物部氏を支持する発想になるのではないか。インド・中国・朝鮮で信じられてきた仏教を拠り所にしようとする発想にはならないような気がする。だから仏教の本質は民族主義に傾斜しにくい。実は「民族」「宗教」「人間」というものよりもっと深いところに流れているものを拠り所としなければ、ほんとうの意味のアイデンティティーとはいえない。それは「一切衆生(生きとし生けるもの)」なるものに流れているものだ。一切衆生と融通(普遍)する自己という矛盾のところに辛うじて成り立つものではないか。


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