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 ヨコムキ
武田定光(親鸞仏教センター嘱託研究員) サンガ第78号 <2005年9月>

イメージ 集団自殺の願望を懐くひとが後を絶たないという。テレビで自殺未遂者(女性)の言葉が流れていた。「前向きじゃ生きられない。かといって後ろ向きでは死ぬだけ。せめて横向きにいきたい・・・・・」と。彼女はインターネット上に「ヨコムキ」というブログまで作っていた。「ヨコムキ」という言葉が、印象的だった。「そうか自分も、ヨコムキでいこう」と励まされたような気もした。しかし、数週間後、彼女は集団自殺を実行してしまった。私は、「なぜヨコムキではダメだったのか」と自問した。なぜ、生ではなく死に重心がおかれてしまったのか。これは、よく言われることだ。「ものは豊かになったが、こころはかえって悲惨だ」と。

 現代は極度の消費社会である。つまりものが氾濫し、日本人から飢えという現象が消えてしまった。日本は、いや人類は、このような社会をいまだ経験したことがない。物を追求し、ものが豊かになりさえすればと頑張ってきた世代には、見えない悲惨さである。昔の悲惨さとは異質の悲惨さがあるれている。しかし、ものが豊かにあふれていても、それでも人間が生き生きと生きられるにはどうしたらよいのか。それには、どうしても「身体」への視座が必要だろう。現代は脳(理性)が身体を飲み込んでしまった。オウム事件も、そのひとつの現れである。身体そのものを脳から解放しなければならない。心臓の鼓動の力、吸っては吐く呼吸の流れ。それらの身体が私を力強く生存させている。この力に圧倒されるしかない。


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