広報紙『サンガ』
TOP > 広報紙『サンガ』 > バックナンバー > 老いるについて
バックナンバー
老いるについて
上手にころぶこと
浜田クリニック 浜田晋 第88回 <2007年7月>

 うちの妻はよくころぶ。私と同年齢だから80歳。先日も、高知へ行く前日、四谷の自宅の階段で大きく後ろ向けに転倒した。私は不在だったので見ることができなかったが、こうなってこうころんだことを実演してもらった。腰が痛いと言う。「医者にみてもらえ」と言ったが、「明日は高知。忙しいから少しようすをみる」と言う。聞けば、右手にクリーニング屋からもどってきたオーバー(長いビニールにくるんである)を持ち、左手に伊勢丹がえりの買い物袋を持ち、えっちらおっちら階段を上がっている途中、そのビニールの袋のはじを踏んだひょうしに真後ろに十数段(U字形に曲がっている)落ち、玄関の板の間までもんどりうってころんだという。しばらくして「あ! ころんだ!」と気がついて「あわててはいけない」とセルシン(*1)を1錠のんだ。そしてゆっくりと身体のあちこちを点検した。「生きている。たいしたことはない」と自ら判断したらしい。動悸がとまらないので少しベッドで寝たらしい。

 小1時間くらい眠った。目覚めたところに私が帰ってきたという話。翌日高知へ発った。

 母がまだ生きているころで、その病院の整形外科でみてもらったところ「胸椎の圧迫骨折で1カ月の安静治療が必要とのこと」。本人は平然としている。

 前科は数かぎりなくある。一番ひどかったのはマンションの廊下で下はよくあるピータイル。かっこつけて歩いていていきなり後ろにひっくりかえり(本人談「両足が宙にまった」と)、しかしそのまま出勤、夜は会合で酒を飲み、さすがに不眠  翌日整形外科に行ったら左ヒジの複雑骨折で、要手術、ボルトを入れる手術をされて半年後(?)ボルトをはずされた。何人かの医者から「強い方ですねぇ」「ころぶのが上手だ」「先天的になにかあるのでしょう」とからかい半分言われている。私は猫に近いのではないか、と内心思っている。

 しかし一般人はそうはいかない。老人になるところびやすい。私も先日、コンクリートの道を歩いていて、いきなり前にどさっと倒れた。すごい音がしたのはおぼえているがどうころんだか記憶がない。友人が「お前それは脳虚血発作(のうきょけつほっさ*2)だよ。MRIとってみろ。穴だらけだぞ!」と言う。「わかっているよ。いまさら80歳にもなってMRIでもないだろう」。

 でも患者には言う。「ゆっくりと歩いてくださいよ。ころんで骨折すると寝たきりになりますよ。呆けますよ」と。一般的にはそうですから要注意。「上手にころべ」とは言えない。

※1 安定剤の一種 ※2 脳卒中の一種


戻る

Copyright(c) 2004−2007 HigashiHonganji ShinsyuKaikan All right reserved
(このホームページの記事・画像の無断転載を禁じます)