正月になると、お餅をよくのどにつまらせてお年寄りが何人死んだという記事がよく新聞に出る。今年は関東地方だけで十数人あったというから、5倍して(私はいつも新聞に出ている数字は、現実にはごく一分で実数を5倍ないしは10倍することにしている)100人近くが餅をのどにつまらせて亡くなっているのだろう。
年末に私は若い女の子とデートをした(老い〜呆けの予防のためと称して)。上野には(駅周辺には)あまりおいしいものがない。ただ“とんかつ”だけは、発祥の地(?)だけあって老舗が数軒ありそれぞれ個性があってうまい。「とんかつでいいか?」と彼女に聞くと、およそとんかつの似合いそうもない良家のお嬢さんであったが、めずらしかったのであろう「先生がおいしいと思うものならなんでも」と答えたので、行きつけのとんかつ屋に向かった。年末だからであろうか、(アメ横の中を通りすぎて)とてもこんでいたが、かえってデートには新鮮であった。
行きつけのとんかつ屋が、たまたま休日でいやな予感をもちつつ、ちょっと暗い道を二人で歩いて別のとんかつ屋にむかった。桂文楽や馬生のいきつけの店で、雰囲気は悪くないが、べっとりとして大きいとんかつで、私の好みのからっとしたあげ方とちがうのであまり行ったことがない店であった。
店はがらんとしていた。そのあわただしい年の暮れに優雅にこんな店へ来る人はいないのであろう。
彼女はえらく緊張していた。酒はのまない(のめない)という(ちょっとがっかり)。
運ばれてきたとんかつは、やはり大きく、コロッケを大きくしたような姿をしている。久しぶりにたべてみると味はうまい!彼女も「こんなめずらしいとんかつははじめてです」といってにっこり笑ってくれた。
ところがである。その時は突然やってきた。時間がとまった。とんかつの大きなかたまりがのどにつっかえてのみこめないのである。呼吸が出来ない。時々ヒューッと音を立て、わずかな空気が入った。あせればあせる程とんかつのかたまりはのどを通らない。「お水お水」とそばにいたおかみがいったがとても水など入る余地はない。
「救急車、救急車!」と誰かが叫んだが、かたくなに制した。あとはあまり書きたくない。