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老いるについて
 青テントの人々
浜田クリニック 浜田晋 第77回 <2005年9月>

  田舎からお人が見えて、東京見物と問われればどこだろう。東京タワー、六本木ヒルズ、お台場、銀座、皇居、ディズニーランド、新宿副都心などだろうか。私は浅草寺を見た後、隅田川べりに出て、巨大なうんこビルと川べりに並んだ青テントの群れを是非あげておきたい。それは巨大都市東京でドロップアウトした、その多くは老人たちが必死になって生きようとする姿が見えてくるからである。

 青テントかけして、そこにはさまざまな「生」がある。上野公園にも一群あるが、私が通勤する四谷の外堀公園にも、去年から一老人が住みついた。テントには格別特徴はないが、立派な人である。70歳前後でもあろうか。とにかく几帳面である。私が出勤する道路を掃除している。彼の住んでいる所ばかりではない。竹ぼうきは何本も持っていて、心ないサラリーマンがポイ捨てする道路を、四谷の駅から約200m位きれいに掃除するのである。そして毎年街路樹の根元にある小さな土地に朝顔の種をまく。そして大きくなると竹を立てて、大きな樹木やそこら中の植え込みにビニールのひもで上手く絡ませ、ちゃんと結ぶ。その結び目が心憎い。まるで植木屋でもやっていた人のようでもある。小ぎれいな大柄の老人で、臭くはない。視線が合うとすぐそらす。うちの妻などは「最近どこへ行っても種を売っていない」という。デパートの園芸場へ行っても「種が芽を出さない!」といって怒る奴が多くて、ばかばかしいからやめたという話。「あのおじいさんから、いっぱい出ている芽を数個もらいたいがなかなか言いにくい・・・・・気後れがして・・・・・」と言う。誰でも平気で口をきく女にしては珍しい。その存在感に圧迫されるのであろうか。

 一仕事終わると鳩に餌をやる。その老人が住みついてからというもの、鳩の一群が外堀公園に発生した。私は鳩が嫌いで餌などやらないで欲しいと想っていたら、糞をするらしく最近やめた。面白いもので、鳩は激減した。そして大抵はテントの横で大の字になって寝ている。対岸にはコンビニがあるから、賞味期限切れの弁当をもらってくるのであろう。そしてゆうゆうと寝ている。交通ラッシュもどこ吹く風。どんな夢を見ているのであろうか。巨大都市東京は実にいろいろな人が住んでいるのである。これが東京というものであろう。


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