広報紙『サンガ』
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老いるについて
 良医か名医か
浜田クリニック 浜田晋 第68回 <2004年3月>

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 前号の続きである。その時の整形外科医。私より十歳ぐらい年下であろうか。それが私と違って実に動作が生き生きしている。そしてよく気がつく。整形外科医なのに老人のくどくどとしたわけのわからぬ話をよく聞いておられる。そして話の切り上げ方がうまい。私は精神科医であることがはずかしかった。「うんうん」と相手の眼を見て話をよく聞きながら「さあもう十分話を聞きました。次にしましょう」と上手に立ち上がって、次の患者さんのところに行かれる。あとはナースがフォローする。病むことによって私は多くのことを学んだ。

 白内障の手術をしてくださった、まだ若い女医さんからこんなことを言われた。「ものがはっきり見え出したといって、読書やご執筆をあまりやり過ぎないでください。レンズは所詮もの≠ノしかすぎませんから、水晶体のように厚くなったり薄くなったり自然に調節することができません。眼鏡で若干の調節はできますが、白内障が治ったのではありません。お疲れになるのは当然なことです」と。

 書店へ行くと「名医(専門別)」の一覧表がたくさん出ている。だいたい大学や大病院の医長先生の名前が書いてあるが、私は全くそんなものを信用しない。タイムリーに腑に落ちる言葉数の多い先生が良い先生だと思っている。手術や診断がうまいだけでは医者はだめである。患者が先生の言葉でほっとすることが大切なのである。

 旧年十二月十九日、私の母が百四歳で大往生した。私の一つ年下の先生が二十二年母を診てくださった。いろいろなことがあった。一言では言いつくせない。母を大声でどなられたこともあった。「先生好き。と言われるとついついその気になって、大変な方でしたが、みんなあに好かれちょったですよ。おも(元来)はいい人やきに」と通夜の時私に言ってくださった。そして骨ひろいの時まで来てくださった。「百四歳まで生きると、骨がほとんどなくなるもんですねえ。それやに、のど仏だけしっかりしているのも妙ですねえ」と二人で話し合った。私をいつ東京からタイムリーに呼ぶかまで(在高知)いろいろと気を遣ってくださった。「先生、しばらくゆっくりお休みください」と言っておたがい別れた。

 良医に恵まれることは老いるにつれ重要なこととなる。


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