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老いるについて
 ちょっとした老年病にかかって
浜田クリニック 浜田晋 第65回 <2003年9月>

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 私は今年一度に三つの老年病を体験した。

 第一は白内障。これはうまくいった。皆さんにも早く手術されることをおすすめしておく。

 第二は総入歯。いままでかかっていた先生が転居なさって、新しい先生にかわった。医者によってその処置がずい分とちがうものだ。二人ともとてもいい先生であるが、その方法はちがう。だましだまし一本一本少しずつ手当てして、高い入れ歯を入れながらやられる先生と、まず全体を見わたして大方針をたてて、そのもとに時間をかけて根本的に手当てする二つの型があるようだ。新しい先生は後者。きちんと論理的に説明して、「全治するまで一年はみておいてください」と言われた。「食べるもので何がお好きですか?」と問われ、思わず「おすし」と答えたら、「あわびはちょっと無理かもしれませんが、いかやたこくらいは食べられるのを最終目標としましょう」とおしゃった。長年悩みつづけて来た悩みが思わずすっとらくになった。「一年か……」歯が立派になおってすぐ死んだというんじゃああんまりだから、もう十年位つかわねば損であろう。

 いろいろと診察中におっしゃる言葉が「面白い」。

 「これは食べられそうもない、これは食べられそうと決めてしまわないで、なんでも挑戦してみてください。そしてこれは○、これは×と具体的におっしゃってください。大いに参考になります」
「今更歯をなおしてもどうせ長生きせんのだからこれでいいです、とあきらめてはだめです。歯の治療にはなんでも食べてやろうという欲が必要ですよ」

 「インプラントなどという新しい技術は、まだたかだが二十年の歴史しかない。骨に穴をあけるのだから、その骨が全体としてあとどうなっていくのか、まだ未知なんですよ。それを売りものにする歯医者がいるならまず駄目です」

 目の前には水槽の中に大きな伊勢えびが生きている。
「海が好きなんですよ。年とったら島で老人とともにくらしたい。私は入れ歯については誰にも負けない自信があります」と、さわやかにおっしゃった。

 まだ日本の医療も捨てたものではない。
第三は「下駄骨折」の話。その時にかかった整形外科医についてである。


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