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老いるについて
 「定年」(その2)
浜田クリニック 浜田晋 第58回 <2002年7月>

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 京の町医者 松田道雄大先生は「医者は60歳か65歳を過ぎたらやめるべきだ。患者に失礼だ」と言って定年退職され、文筆業に専念された。小児科医と精神科医は少し違うかもしれない。

 ある患者Aさん「先生はいくつになってもそこに坐っていないとだめです。顔が違うと私はここへ来る気がおこりません」

 ある患者Bさん「先生がおられるなら来ます。しかし他の先生なら絶対来ません。先生だけです」

 新幹線を乗り継いで山形県から親子2人で通ってこられる患者さんもいる。

 そんな方々に機械的に紹介状を書いて、地元の医者にバトンタッチできるものでもなさそうだ。

 松田大先生のように「患者に失礼」ともいえまい。

 さりとて精神科医も老いる。

 どんな別れが待っているのか、今から心を悩ましている。

 私は現在600〜700人の患者を受けもっているが、そのうち100〜200人は私でなければ、おそらく医療から離れてしまう危険性が大ではなかろうか。

 5月4日、浜田クリニックは引っ越した。

 昭和49年「とても精神科診療所などは町の中では成り立たない。1年か2年でつぶれる」と言われていた。その浜田クリニックの開設当時から30年たった今は、生死をかけた悲壮感はもうなかった。若いスタッフは楽しそうに、力強くその仕事をこなしてくれた。

 "ニュー浜田クリニック"はすべてが新しくピカピカでスマートで、機能的で患者さんの評判もよい。

 「明るいですね。広いですね。待っていても心がなごみます。前のところは暗くて、患者同士が顔をつきあわせそうでいや〜な気持ちになったこともありますが、今度のところは待つのが苦ではありません」と言ってくれる。すべりだし順調である。

 3〜4ヵ月でよく引っ越せたものだと思う。スタッフのチームワークと若いパワーであろう。

 30年たつとすべてが変わる。

 それにしても、75歳でまだこんな仕事を続けられるとは思ってもみなかった。

 そしていよいよ、10月から新しい先生を迎えることになる。52歳、とてもいい先生である。当分は2人で半々くらいの診療体制となる。私は週2日を予定している。

 さあ、これからが大変である。

 若くてハンサムで優しく、新しい医療技術にもたけた近ごろめずらしい「いい先生」と私は思っているが、古木と新木を選ぶのは患者さんたちである。果たしてつぎ木はうまくいくだろうか。

 当分、楽はできそうもない。


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