広報紙『サンガ』
TOP > 広報紙『サンガ』 > バックナンバー >老いるについて
バックナンバー
老いるについて
 PTSD(心的外傷後ストレス障害)
浜田クリニック 浜田晋 第55回 <2002年1月>

ロゴイメージ

老いることは悲しい体験を重ねることである。

世界で一番豊かな国が、世界で一番貧しい国を爆撃するテレビを何度も何度もみせられる。難民たちが牛の背中に荷物をいっぱい積んでのそのそと歩く姿や、傷ついた子どもたちの顔が目にやきついてしまう。世界貿易センタービルの映像には、悲鳴や怒号が入っていたが、アフガンの廃虚にはもはや人の声はない。

あの日から、私はまた不眠症に悩まされることとなる。朝も脱力感と虚無感でなにをする気もない。茫乎(ぼうこ)―。

1995年1月、阪神淡路大震災のとき味わった気持ちにとてもよく似ている。あ〜またか。と思うのである。

私は戦争の子。

私の青春は戦争のまっただ中。

一夜にして街は燃えつくされ、私はまんじりともせず、それを凝視していた。翌日多くの真黒こげの人をみた。

日本の大都会はほとんどアメリカによって燃えつくされた。広島や長崎や沖縄で一体、何人の人が殺されたことか。

その体験は「心の傷」となって、今でも鮮明にのこっているのであろう。

阪神淡路大震災後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やトラウマという言葉がはやっている。ベトナム戦争後314万人の帰還兵のうち15パーセント(推定47万人)が特徴的な精神症状を呈したという。

外傷となった体験がくりかえしくりかえし想起される(フラッシュバック)。
恐怖をともないパニックになる。
それを避けようとして社会や他人から孤立し茫乎となる。
眠れない。悪夢。うなされる(過覚醒)。
アルコールや薬物への依存。
日常的にもイライラしておこりっぽく、他人に警戒的で、ちょっとしたことでビクッとなる。
なかなかよくならない。
なおりにくい。
そしてその状態は、何十年たっても(一生)似たような体験があると、心の闇からよみがえり悩まされ続けるのである。

ベトナム戦争後のPTSDの人々は、今どんな気持ちでこの「新たなる戦争」をみているのであろうか。



戻る

Copyright(c) 2004−2007 HigashiHonganji ShinsyuKaikan All right reserved
(このホームページの記事・画像の無断転載を禁じます)