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老いるについて
 今年も「敬老の日」が・・・
浜田クリニック 浜田晋 第50回 <2001年3月>

 一年に一回「敬老の日」がやってくる。今日がその日である。わたしは不覚にもそのことを忘れていた。猛暑のあと多忙な仕事をかかえていて、一日を暮らすことがとてもつらく、重く、祝日は干天(かんてん)の慈雨(じう)のごとくありがたい。日曜日には、一定の日常的な仕事がすでに決まっていて、ほとんど休めないからでもある。カレンダーの赤い日がありがたい。妻とてそうであろう。

 二人の老人が、今日はちょっと遅めに起きて、朝食をとりながら、お酒を一杯ひっかけて、なんの気なしにテレビをつけると、いつになく老人たちの大集合である。「あー今日は敬老の日であったのか」と、はじめて気づいた次第である。

 総じてわたしは、この日を好まない。今日一日敬(うやま)われてもうれしくはないし、不快である。ところが、今日は一杯酒が入っていたせいか、またテレビを消しに行くのも面倒なので漠然(ばくぜん)と見ていた。

 例によって、ユニークな生き方をしている老人が何人か出てきた。

 料理好きのおじいさんがいっぱい心を込めて、お料理をつくり、近所中にくばって歩く。メールであちこち友達をいっぱいつくって楽しんでいる人。田舎に自力でロッジをつくり都会生活を捨てる人。葬式をデザインする会。自分の死に装束(しょうぞく)まで決めて「これですべてよし、あとは自分の好きなように思いきり生きよう」と言いきる人。気のあった友人と楽しく生きようとグループホームをつくる人、などなど。そして最後は日本国を捨て全く未知の国……どこか東南アジアの国で暮らすことを夢見て旅立つ人……その飛行機が成田を立つ……。

 最後に場違いなおしゃれなどこかの大学の女の先生が、三つの「老後をどう暮らすかの知恵」を挙げられた。

 第一、「第三の家族」をつくること。第一は血縁、第二は結婚して、第三は老いをともに生きる人とともに。

 第二、老後はリセットが必要。妻に「リセットとはどういう意味か」と聞いたら、コンピューター用語だと辞書を持ってきた。「載ってない」というのでわたしが探すと"reset"―置き【はめ、組み】直す、整骨(せいこつ)するとあった。自分が過去社長だったとか、教師だったとかいうことを捨てて、一人の人間として再出発することらしい。

 第三、老いを認めよう(受容する)。

 お見事お見事。さすがNHK。しかし「思いもかけないことにおいこまれてしまうこと」「どつぼにはまること」それも老い。「美しく創る」ことなど出来ませんよ。そんな「不幸な老人たち」はこの番組をどんな気持ちで見ただろうか。

 茫(ぼう)。空(くう)。無(む)。ただ合掌。

 そして今日は、二十世紀最後のオリンピックの開会式であるともいう。早く寝よう。


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