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インタビュー
 佐藤弘道さんに聞く
 大人が楽しければ子どもだって楽しい
写真イメージ
 昨年3月まで、NHK「おかあさんといっしょ」の体操の「ひろみちおにいさん」だった。
小さい頃から運動が得意だった。小学2年生のときモントリオールオリンピックの体操競技を見て人生の目標が決まった。高校1年のときマットの練習中、頭から落下して頚椎を亜脱臼。
オリンピックの夢は断たれたが、好きな体操は続けた。
体操のおにいさん卒業後も、自ら主催する体操教室「らくがきっ子クラブ」で子どもたちといっしょだ。
「子どもに体を動かすことの楽しさを知ってほしい」と、いつも思う。


 NHK「おかあさんといっしょ」の12年間で、15万人の子ども(3、4歳児)と遊んだことになる。子どもは走ることが大好きだ。番組収録中、ずっと走り回っている子もいる。

 「1歳から6歳は第1期ゴールデンエイジと呼ばれているんです。運動能力が大きく成長する時期です。走ることによって、子どもたちは内側から体を鍛えることができるんです。

 スポーツと違って運動は万人のものだと思うんです。ただ歩くことも運動だし、おいかけっこをするのも、鉄棒にぶら下がるのも運動です。よく幼稚園で先生がノルマ教育をするんです。縄跳びは何回、跳び箱は何段跳べなければいけないとか、逆上がりができなければいけないといって競い合いをしている先生が多いんですね。子どもたちはやらされて鉄棒しているわけだから、休み時間になったらもう鉄棒には近寄りません。鉄棒は逆上がりのテストをするものではなく、ただの遊び道具。ジャングルジムやブランコと一緒です。豚の丸焼き(手と足で鉄棒にぶらさがる)をやったり、いろいろなことをして遊んでいるうちに腕や背中に筋肉がついてくる。子どもたちに体を動かすことの楽しさを教えることが大切だと思います」

 東京都の非常勤講師として7年間、障害者のための体育指導をした。

 「平均台の上を歩いたことがありますか?脳性麻痺で車椅子に乗っていた人が平均台の上で歩けるようになったんです。最初はベンチの上を歩く練習をして、はしごを横にして、それを繰り返していくうちに平均台を渡れるようになった。本当はできるのに、やらなかったから、やらせなかったから、本人も周りの人もできないと思い込んでいることがどんなに多いか痛感しました。だれでもハンディキャップをもっています。右利きの人は左手で字が書けないし、目の悪いひともいるし、人と接するのが苦手な人もいる。僕の長男は左の耳がよく聞こえません。2歳のとき急性中耳炎にかかったのです。泳ぐことはできないし、高いところもだめ。飛行機も1時間くらいしか乗ることはできない。できないことを数えあげても仕方がない。できないことよりもできることのほうがずっとたくさんあるのです。長男は今、柔道とサッカーをやっています。

 子どもは親に見守られていると感じられれば、知らない世界にも踏み出す勇気をもつことができます。少しでも離れたら親がどこかへ行ってしまうのではないかと思ったら、子どもは親から離れられない。お母さんたちの励ましのお手紙に交じって、『子どもとどうやって遊べばいいかわかりません』という質問がありました。子どもはいつの時代だって甘えん坊です。子どもが小さいとき何より必要なのは、親子が肌と肌を触れ合わせること。子どもがそばに来たら、『あっちで遊んでなさい』などと言わずにギュッと抱きしめてあげてほしいですね。それだけで子どもは満足して、ひとりで遊びに行けるようになります」

講談社


さとう・ひろみち
1968年東京生まれ。日本体育大学を卒業後、スポーツインストラクターなどを経て1993年、24歳の時、NHK「おかあさんといっしょ」第10代体操のおにいさんになり、全国の子どもやお母さんから絶大な支持を得る。同時に7年間、東京都非常勤講師として障害者の体操指導を勤めた。2005年3月、体操のおにいさんを「卒業」。子どもの体操教室「らくがきっ子クラブ」を主宰するほか、大学の講師、タレントとしても活躍。著書に『ひろみちお兄さんのもっと、からだで遊ぼうね!』『子どもはぜんぜん、悪くない』等がある。



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