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インタビュー
 鹿賀丈史さんに聞く
 自分の中の時計をゆっくりと進めたい
鹿賀丈史さん
 生まれ育った金沢は静かな落ち着きのある町だった。
一歩路地に入れば琴の音が聞こえてきたり、家の近くの浅野川の橋の上からは加賀友禅が見えた。
ゆっくりと流れる時間があった。五十を過ぎて鹿賀さんは、みんな急いで生きているのではないか、と思う。
「自分の時計」をしっかり持つこと、そのことの大切さを感じる。

 どこか反骨の匂いがする。若い頃、松田優作と共演した『野獣死すべし』や『麻雀放浪記』のギラギラする演技。最近の舞台『ジキル&ハイド』での人間の内面の表現。「骨身を削るような演技」と写真家の立木義浩さんも言っていた。

 俳優になりたての頃、舞台で越路吹雪さんと一緒だった。貴重な出会いだった。舞台に立つ者の魂に触れた思いだった。

 「越路さんはとても繊細でやさしい方でしたが、舞台に出ると本当に大きくなられるんです。あるとき、『丈史、ちょっといらっしゃい』と呼ばれましてね。『今日は非常に調子が悪くて、声も出ない。ただこういうときに幕を開けてお客さまをどうやって満足させて帰っていただけるか、そのプロセスをあなたは一緒に出ているんだから見てなさい』と言われました。

 越路さんの歌は会場全体を包み込む大きさがあるんです。歌がお上手であるとか表現力があるということはもちろんですが、やはりご本人が持っておられるやさしさや寛容さが会場を包むんですね。それはすごいことだと思いました。われわれはどうしてもテクニックに走ってその場で芝居をやったりするんですが、観ている方は、その人自身の持っているものをご覧になっていると思うんです。

 役者は歳を重ねるごとに渋くなっていい味が出ると、いろんな方がよく言いますけど、決してそうではないんですね。やっぱりいくつになっても勉強ですし、自分自身をどう見つめるか、その連続だと思います。それができなくなったときは俳優をやめるときだと思います。いくつになっても〈旬〉であるということが、ものを表現する人間にとっては一番大事だし、それが魅力なんだと思います」

 六年続いた人気番組「料理の鉄人」ではド派手なコスチュームで登場したところがいかにも鹿賀さんらしい。この一月からテレビの新ドラマ『ファイアーボーイズ 〜め組の大吾〜』(フジテレビ系列・一月六日スタート)で、消防署長役として出演する。気がつくと五十の峠を越えていた。

 「肉体的にも衰えがきたり、反射神経も鈍くなったり。もっと楽に歳が取れるんじゃないかと若い頃は思っていたんですけどね。もう一度やり直すというか、エネルギーを注入する作業をしないと、この五十代はちょっと乗り越えられないんじゃないかという不安はあるんです。われわれの世代は自殺する人も一番多い。自分の肉体が衰えていくからこそ、精神的にもっと豊かな力強い、そういう生き方をしなければと思うんです。

 そういう意味では、自分の中の時計をゆっくりと進めたいなという思いが最近強くなってきました。そうでないと流されていく。今の世の中は変化が急激で、どこか暴力的です。自分の時計をしっかりと持って、もう少しゆっくりと穏やかに生きることをみんなで考えていきたいものですね」


かが たけし
◆俳優◆
1950年、石川県生まれ。72年、劇団四季に入団。入団二年目で「ジーザス・クライスト=スーパースター」のキリスト役に大抜擢。その後、舞台、映画、テレビで活躍。舞台は「レ・ミゼラブル」「ジキル&ハイド」ほか。映画は「野獣死すべし」「疑惑」「麻雀放浪記」「キャバレー」など。テレビは大河ドラマ「黄金の日々」「翔ぶが如く」ほか多数。「料理の鉄人」では独特な司会で話題となる。また、アルバム「A NEW DAY」をリリース。



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