広報紙『サンガ』
TOP > 広報紙『サンガ』 > バックナンバー > インタビュー
バックナンバー
インタビュー
 高橋紳吾さんに聞く
 自分探しの迷路なぜカルトにはまってしまうのか
高橋紳吾さん
 地下鉄サリン事件から7年。その後もカルト集団の事件が幾度となく報道されている。
宗教病理学を研究する高橋さんは、「日本脱カルト研究会」の代表理事として活動している。
効率・合理化をおしすすめ、偏差値によって子どもがはかられる社会。
かけがえのない自分を求めて迷路にはまる。ただの人であることの素晴らしさを誰も伝えない。
カルト問題の背景にある闇を高橋さんはそう指摘する。
 留学していた80年代末のドイツでは、麻薬とネオナチズムとカルトが「ドイツの若者の3悪」と言われていた。帰国後、統一協会の問題が持ち上がり、高橋さんはいち早く精神科医の立場からマインドコントロールについての論文を発表した。そして地下鉄サリン事件である。

「60,70年代、若者達はアイデンティティの拠所(よりどころ)として、学生運動によって社会革命をめざしました。それが挫折し、今度はよりラジカルに、心の中の体制を覆(くつがえ)そうとカルトに走りました。

80年代は<心の時代>ということが言われ始めましたね。しかし、実際には中学生・高校生たちは偏差値でしか自分をはかってもられない。自分を<かけがえのない存在>だとはとても思えない状況があったわけです。

カルトに入ると、精神革命を行うことによってすばらしい未来があると教えられる。それに、考えなくてもいいのです。悩まなくていい。お前の人生はこういう目的であるのだと言われ、その目的に向かって一生懸命やる。ロボットになるのです。自分で考えると雑念の中にサタンが侵入してくる。教祖の言う通りにしなければ、間違った方向に行くと教えられる。

考えるということは、若い人たちにとっては無駄に時間を使っているような感じがするんですね。受験戦争で効率よく勉強してきた歴史があるわけです。考えずに修行していくとステージが上がる。現世を否定していても、メカニズムとしては同じなのです」

精神鑑定医として残虐な犯罪を犯した被告人と接触することも多い。条件さえ整わなければ、彼らは犯罪を犯さなかったのではないかと、高橋さんは言う。

「実はどうして殺人が起こるかということはよくわかっていないんです。犬は犬を殺さない。ケンカして負けたら腹を出すとそれ以上攻撃しない。狼もそうです。敗北のサインを出すと、怒り狂っている狼も噛みつけなくて、地面に向かって怒る。攻撃をセーブする本能が備わっているんです。

人間にはそれがない。人間は牙(きば)を持たないからケンカしても死にはしないという
ことになっていたのです。しかし、牙の代わりに武器を手に入れて際限なくやってしまう。また、人間だけは言語能力を持っていて記憶力がいい。怨みの感情をいつまでも持ち続ける。犬は3時間もすれば忘れてしまう。殺人者のほとんどは、強い正義感に燃えて人を殺すんです。悪いことをしていると思わない。そこに人間の深い闇があります」


たかはししんご
●精神科医
1952年、広島県生まれ。東邦大学医学部大学院卒業。東邦大学医学部精神神経科医局長を経て、ハイデルベルグ大学精神医学教室に留学し、比較宗教病理を研究。現在は東邦大学医学部精神神経科助教授。日本脱カルト研究会代表理事。著書に『きつねつきの科学』『超能力と霊能者』『サイコパスという名の怖い人々』などがある。


戻る


Copyright(c) 2004−2007 HigashiHonganji ShinsyuKaikan All right reserved
(このホームページの記事・画像の無断転載を禁じます)