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インタビュー

 有馬理恵さんに聞く

 ふるえるような怒りの奥底にすがるようないのちの願いがあった
有馬理恵さん
 高校2年のとき、「釈迦内柩唄」(水上勉原作)の舞台を観た。幕が下りても動けなかった。放心状態だった。
この芝居に登場するふじ子をとおして心の奥深くに眠っていた魂が揺り起こされた感じだった。
有馬さん自身の人生の再生のドラマがそこから始まった。
その舞台にいま有馬さんはふじ子役で立っている。100回を重ねた。人間の怒り、悲しみ、そしてすがるような願い。命懸けの舞台だ。
 心に刻む詩がある。
「わたしの血を生んだ/なげきを生んだ/ふるえるような怒りをうんだ/そうして わたしのすがるような ねがいを生んだ」
(丸岡忠雄・詩集『ふるさと』)。
そのふるえるような怒りやすがるような願いは、有馬さん自身が身をもって経験したことだ。

「和歌山の市民会館で『釈迦内柩唄(しゃかないひつぎうた)』を観たとき、感動して、ずうっと泣きっぱなしだったんです。家に帰っても、一週間くらい学校へ行けませんでした。人生の考え方が180度変わったんです。

このお芝居は職業差別とか人種差別とか、奥深い人間の業や憎悪を問題にしています。私はそういうものを少しでもいい方向に進めていけるような仕事につきたいと思いました。それで自分が感動した役者に挑戦してみたいなと思って、俳優座のオーディションを受けてみたのです。

10年後に自分が出ることになったのですが、心の奥底を開かなければこのお芝居はできないんですね。毎ステージ、このステージで自分は死んでもいいと思わないとできない。それぐらいエネルギーを使わないとこの役はできないし、許されないんじゃないかと思っています」

釈迦内は秋田県の花岡鉱山の近くにあった在所の地名。芝居はそこで「焼き場」の仕事をしている家族の話である。職業ゆえ忌み嫌われ、さげすまれながらも、家族の深い絆と愛情によって、ふじ子は父の仕事を継ごうと決心する。焼き場の裏山の畑には、人の灰を肥やしにして父が育てたコスモスの花がいっぱいに咲いている。「花は死んだものの顔だでや」と言った父の声が聞こえてくる。ふじ子の胸に家族の思い出がよみがえる。2人の姉のこと、母親のこと、鉱山から逃げて憲兵に殺された朝鮮人の崔さんのこと……。

「ふじ子という役は雑草のように強いんですね。きっと本当のやさしさを知っているからかもしれません。私にとっては人生の師匠です。ラストのシーンでうしろのドロップにいっぱいのコスモスが咲き乱れるんです。それが劇場のお客さんたちの心にいきわたって、世界中、すべてがコスモスの世界になっていることを私はいつもイメージしているんです」

昨夏、上演したビデオを原作者である水上勉氏に送った。

「作者が書かぬことを知る役者を得たことを喜びます」と返事をもらった。うれしかった。11月の長野での公演で、その水上氏が見つめる舞台に有馬さんは立った。


ありまりえ
●女優
1972年、和歌山県生まれ。俳優座研究所を経て劇団俳優座に入団、現在劇団員。「ミラノの奇蹟」「結婚したいと思いませんか?」「山彦ものがたり」など多数に出演。高校時代に「釈迦内柩唄」(浅利香津代主演)の舞台を観て感動、演劇の道を志した。99年、劇団希望舞台の「釈迦内柩唄」に参加。100回以上のステージを踏んだ。1月9日〜13日まで、六本木俳優座劇場で「肝っ玉おっ母とその子供たち」に出演。


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