話題が海におよぶと、白都さんの目が輝いた。そういえば十数年前、主演した「人魚伝説」で、白都さんは夫を殺された海女の復讐劇を体当たりで演じた。
「大変だったんです。寒いのに水中撮影や水辺のシーンの撮影で、一日中体が濡れていて、潜水病にまでなって後遺症に悩まされました。
ところが、あるとき休暇で南の暖かな無人島に行って、あまりにも海がきれいでちょっと泳ぎながら海の中を覗(のぞ)いたら、透明でずっと先まで見えるんですね。思わず水の中に吸い込まれていくかのように、ダイビングにトライしました。思い立ったら徹底してやらなければ気がすまないものですから、スキューバを教わってライセンスを取ろうと思ったんです。潜りは撮影で経験があったものだから、体が覚えていたんですね。最初のダイビングで30メートルくらい潜って、鮫を見たんです。それからは、もうやみつきになってしまって。私がよく行くミクロネシアの島々には戦争中のおびただしい数の沈船などもあるんです」
潜るだけで飽き足らず、美しい海の中を伝えたくて水中写真に挑んだ。
「これが難しいんです。肉眼で見てこんなにきれいなのにピントが合わないし、明るいと思って撮ってもフラッシュが間に合わなかったり、ハレーションを起こしたり。魚はじっとしてくれませんしね。一時はあきらめたんですけど、気をとり直して、やっと撮れるようになりました。今はダイビング専用の船で1週間乗りっぱなしで1日5ダイブというハードスケジュールで撮影に行ったりするんですよ」
――それじゃあ、なかなか結婚はできない。
「そうなんですよね。大物の魚には出会っているんですけどね……。でも、マンタや鯨に出会って大感激なんです。イルカの群れに出会って感動したこともあります。
水の中で本当にいいなと思うのは、しゃべらないですよね。陸では言葉でしゃべろうとするから逆に壁ができることがある。水の中では手で基本的な合図を送ります。ダイビングに行くと気持ちの触れ合う旅となります。いざという時には命懸けで助け合うわけですから、運命共同体的なところがあるんです」
3年ほどアメリカやカナダで生活した。女優としての可能性を国際的な場で試してみようと思った。自分の信ずるままに生きること、白都さんはそれを大事にしてきた。
「人にどう思われるかという人生ではなく、自分の人生ですからね。それで痛い目に会おうと失敗しようと、それはやってみればいいんですよね。失敗したらそこから学ぶだろうし、それでもこりずにということもあるかもしれない。どんなに遠まわりするはめになっても、自分が信ずる道を貫くべきだと思います」
白都さんのチャレンジはまだまだ続きそうだ。
「せっかくアメリカに行ったのだから、大物スターと共演するチャンスをつかむとかね。向こうでは10歳は若く見られますから(笑)」
しらと まり
◆女優◆
1958 年、福岡県生まれ。桐朋学園短期大学芸術学部に在学中に、ミス・ユニバース関東代表に選ばれ、芸能界へ。7 9 年、NHK
大河ドラマ「草燃える」に出演。同年、ゴールデンアロー賞放送新人賞。8 0 年、井上ひさし作の「イーハトーボの劇列車」で初舞台。8
4 年、映画「人魚伝説」で熱演、横浜映画祭主演女優賞に輝く。「櫂」「夜汽車」などの名作にも出演。テレビドラマの出演も多い。キネマフォト集「情事」「カフェ・サントス」等の写真集も話題になった。