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インタビュー

 鳥越俊太郎さんに聞く

 あえて異見の立場をとる
 豊かさゆえの病があるかかえこんだ心の成人病
鳥越俊太郎さん
 数年前、テヘランの特派員勤務を終えて、帰国し、銀座を歩いていたとき、鳥越さんは雷に打たれたような衝撃を受けた。日本人の肉づきのよさ、肥満の現実。肥満は飽食からきていた。
敗戦から50数年、ひたすら豊かさを追い求め、自己抑制のきかない放恣(ほうし)に流れて、成人病の症状があちこちに吹き出ていると、鳥越さんは見る。そしてガキの文化の横行。カラオケではオジサンの思いを託す歌が消えてゆき、テレビも若者向けの番組が増えていく。「オヤジよ、心に銃を!」と、鳥越さんは吠える。
 戦後、日本は豊かさを求めてひた走ってきた。そのあげくの飽食。「豊かな社会が否応なしに抱え込んだ成人病」の症状があちこちで出ていると、鳥越さんは言う。

「50、60のおじさんたちが飽食をして成人病になるのと同じように、社会が豊かになってコレステロールがたまった結果、いろいろなところに成人病としての症状が出てきています。

例えば<キレる症候群>の事件が多発しています。どの事件も、どうして殺す必要があるの?なぜそこまでやる必要があるの?と言いたくなるものばかりです。キレたもん勝ちというか、人より早く感情を爆発させ、パワーで相手を威圧したり倒したほうが得だという価値観が若者に広がっていますね。社会全体が欲望をコントロールする力を失っている。セルフコントロール、自制心がないのです。日本は今とても品位のない社会になっています。

ぼくは1946年に小学校に入学しました。小学、中学、高校、大学といつもひもじい思いをしていた記憶が残っています。日本も決して豊かとはいえなかった。貧困ゆえの問題はいろいろありましたが、生きる力は貧しい時代のほうがあったように思うんです。それなりにみんな必死に生きていた。人間のもつべき想像力だとか表現力だとか、人間関係や社会規範が自然と身についたんです。もちろん、もう一回貧しくなれなれというわけにはいきません。親や学校や社会そのものが自覚して、セルフコントロールという力を小さいときからどうやって育てるかということですね」メディアの報道が同一方向へ暴れ馬のように走りだす現象をスタンピートというのだそうだ。鳥越さんは日本はその傾向が強いと言う。だからあえて「異見」にこだわる。

「テレビはファシズムだと思うんです。あっという間に世の中の色を一つに染めてしまう。ファッションがどうだとか、どうでもいい話題ならいいのです。しかし、北朝鮮の問題でも、突発的なことになった場合、すさまじい雪崩(なだれ)現象のようになってしまって、あっという間に戦争の火ぶたがきられるということにもなりかねない。政府や自衛隊を誰が後押しするかといったら、国民ですよ。メディアが煽(あお)って、国民が煽られて、戦争を支援していく。

だから、テレビの中で、異なる異見や視点、さまざまな価値観が共存できるような状況になっていないと、ぼくはこわいと思います。日本中が何か一色に染め上げられてそっちの方向へ行くとなると、ぼくの中のセンサーがピピピと鳴るんです。単なるヘソ曲がりかもしれないけれども、マスコミの中で、そういう天邪鬼(あまのじゃく)が一人くらいいてもいいかなと思っています」


とりごえ しゅんたろう
◆ニュースキャスター◆
19 40 年生まれ。京都大学卒業後、毎日新聞に入社。大阪本社社会部、東京本社社会部、イラン特派員、『サンデー毎日』編集長を経て退社。8 9 年より朝日テレビ「ザ・スクープ」キャスター。「イエスの方舟」スクープや「宇野首相女性スキャンダル」報道で一躍有名に。著書に『異見(あまのじゃく)―鳥越俊太郎のジャーナリズム日誌―』(現代人文社)がある。


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