広報紙『サンガ』
TOP > 広報紙『サンガ』 > バックナンバー > インタビュー
バックナンバー
インタビュー
 落合恵子さんに聞く
  ようこそクレヨンハウスへ
 女性がいる。子どもがいる。だから、そこから考える。

 けやき並木の原宿・表参道から少し横に入ったところにクレヨンハウスがある。21年前、子どもの本とお茶のサロンとしてスタートした。現在は女性の本の売り場、自然食レストラン、無農薬の有機栽培による野菜市場もある。豊かな感受性で命を受けとめる落合さんの気配りが隅々までいきとどいたコミュニティーサロンである。
 最新のファッションが行き交う街、原宿。そのまっただなかで、落合さんは現代の行き着く先の向こうから、われわれにメッセージを発信し続けている。
 「人間が本当に風通しよく生きていくためにはどうしたらいいか。私は<片側の肩貸し合いネットワーク>と呼んでいるんです。両肩を貸してしまったら共倒れになる。どうしようもないときでも片側の肩をお互いが貸していく。そういう関係をつくりたいんです。血の縁ではなくて結縁ですね。昔の人が「おたがいさま」と言ってきたものです。やわらかな人との結び合いです。
 フェニズムというと日本だと女権拡張とかなんともかたい言葉で訳されることもあるのですが、そうではなく、一人の人間が気持ちよく自分であることを愛する、また他人の自分というものを愛せるような考え方と、それを生活の中で実践していくこと。そのためには社会はまず平和でなくてはいけないし、戦争はあってはいけない。差別はあってはいけない。つまりある種の全体主義に対する、もっとやわらかに生きようよという提案と実行を、私は私のフェニズムという位置づけをしているんです」

 クレヨンハウスは「出会いの場」だと落合さんは言う。「うちはいつもお客さまの声から始まるんです。生きるということをやわらかく輪で結んでいきたいんです。それが食卓から始まる場合もあれば、一冊の本からも始まる。そんな始まりを大切にしていきたいんです。

 食も同じです。大量生産・大量消費の時代の中で、私たちはいのちのないものを食べてきたのです。だけど、やっぱりお米ひとつでもいのちなんですね。野菜でも自然のいのちをいただくわけです。お米一粒、ホウレン草一株、また、それを作る方々のいのちがある。沢山のいのちの共同作業です。いただくいのちと向き合うということを大事にしたいんです。いのちを食べるということは、正直言ってそのいのちを殺しちゃっているわけですよね。そのこともきちっととらえていきたいですね」

 5年前から無農薬・低農薬の有機栽培による野菜や果物、無添加の加工食品などの野菜市場と自然食レストランを始めた。

「食物アレルギーの時代です。アトピーの子供が増えていますよね。農薬とか防腐剤とかいろんなものとも大気汚染とも関係があるのでしょう。特に子どもは自分で選べない。そういった子どもや家族が気楽に来られる場所を作ってほしいという声をいただいてスタートしたのがこのレストランなんです。私たちが文明と呼んできたもの、発展や開発と呼んできたものの中に、人間が生きるということ、あるいは人間の自然の生と死というものに逆行する何かがあるのではないでしょうか。新しい智慧を獲得することが必要です」

 クレヨンハウスは「笑ってしまうほどの大赤字」だそうだ。それにへこたれず、おおくのスタッフと共に、落合さんの生き方はあくまでもしなやかだ。

「私たちが本当に豊かにおだやかに生きていくためには、より多く、より早くといわれた、高度成長時代の価値観から、よりゆっくり、より少なくというふうに、自分たちの発想を変えていかないと本当の豊かさに出会えないのではないかと思うんです」

 バブルのはじけた今、落合さんのメッセージは啓示のように響く。


おちあいけいこ
作家
1945年、栃木県生まれ。明治大学文学部卒業。文化放送アナウンサーを経て作家となる。東京青山、大阪江坂に子どもの本の専門店「クレヨンハウス」、女性の本の専門店「ミズ、クレヨンハウス」を主宰。子どもの文化をめぐる情報誌『月刊子ども論』、総合幼児教育雑誌『月刊クーヨン』を発行。主な著書に『あなたの庭では遊ばない』『生命(いのち)の感受性』、97年12月に『雪の贈りもの』『「わたし」を好きになるために』を刊行。


戻る


Copyright(c) 2004−2007 HigashiHonganji ShinsyuKaikan All right reserved
(このホームページの記事・画像の無断転載を禁じます)