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人輝くとき

 つましい若者がいる
児童文学評論家・翻訳家  清水真砂子 サンガ第80号 <2006年3月>

 マスメディアは社会のさまざまな事象を等身大にとらえて、私たちに伝えてよこしているか。問うまでもないこんなことを、私は今あらためて問いたくなっている。例えばNHK教育テレビの「しゃべり場」を見れば10代の現在がわかるか。ノーである。あそこに見られるのは若者たちのある部分を何倍にも拡大したもので、同じ世代の若者にきいても、ちょっとね、と言う。

 今どきの女子大生は軽い。ファッションにうつつをぬかし、ちゃらちゃらと遊んでばかりいる。マスメディアの流すイメージをそのまま抱いて都心の女子短大の授業にもぐり込んだ50代の女性は、学生たちの真剣に学び、考えようとする姿勢に、こんな学生たちもいるのか、と驚きをかくさなかった。もちろんそれとて学生たちの一面でしかないのだけれど、マスメディアはこのような面は十にひとつも取り上げようとはしない。そうこうするうち、日々若い人たちと付き合って、その実像を相当つかんでいるはずの者たちまでが、いや、少なくともこの私だって、自分が身を置く現実よりメディアの流すイメージにとらわれ始め、すぐ身近にそのイメージを裏切る学生たちがいてくれても、それが見えなくなってしまう。

 そんな時、私の肩をポンとたたき、目を覚まさせてくれるのは、ふと耳にとび込んでくる学生のつぶやきであったり、本誌78号で紹介したような卒業生からの手紙であったりする。最近のことでいえば、若い人たちは軽々しくて、がさつ、と思い込みそうになっていた私の目をはっと開かせてくれたのは新聞広告にもほとんどのらない黒川創の小説『明るい夜』(文藝春秋社)であり、私の観た夜は観客が20人にも満たなかった野村惠一監督の映画「二人日和」(岩波ホール)だった。このふたつの作品に描かれる若い人たちのつつましさ。そして、ほとんど静謐と呼びたいほどの静かさにふれてキャンパスに戻れば、そこにもまた静かに丁寧に日々を生きている若者がちゃんといてくれるのだった。


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