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仏事一口メモ
 御布施(おふせ)
  第20回 <1996年3月>

 葬儀には、住職に差し上げる包みもの(御布施(おふせ))も準備しなければなりません。今回は、この「御布施」についてお話しします。

 布施の語源をたずねてみますと、古代インドの言葉でダーナといい、慈悲の心をもつて施すこと(喜捨(きしゃ))を意味しています。そして、仏教では、布施を次の3種に分けています。

  1. 法施(ほうせ)(仏さまの教えを説き開かしめること)
  2. 財施(ざいせ)(衣食などを施すこと)
  3. 無畏施(むいせ)(畏れのない安心を施すこと)

 住職に差し上げる御布施は、この財施にあたります。
 日ごろの私たちは、品物やサービスの売買という経済感覚(利潤の追求)で物事を計ってしまいます。御布施に関して、「いくらお包みしたらよいのですか」という質間をよく受けますが、この感覚も同じように思えます。

 そしてこの感覚は、仏教が伝えてきた人間のいのちそのものにも値段をつけてしまうことになるのです。本来、人間の尊いいのちには値段をつけられるものではありませんし、ましてや、他人にも決められるものではないのです。

 故人は死をとおして、「人はみな死ぬ」という事実を身をもって教え、「これからどのように生きるのですか?」という、大切な問いを投げかけてくださいました。その問いに応(こた)えることは、生きていることに心から喜べる生活に目覚めることなのでありましょう。この目覚めこそが、尊いいのちに生きる新しい「私の誕生」を意味するのです。

尊いいのちにあい得た法施の喜びは、喜んで捨てるという財施の心を生みます。

 ですから、大切な人を亡くした大きなご縁に差し上げる御布施は、亡き人への、そして仏さまへの精一杯の報謝(ほうしゃ)の気持ちを表すものなのです。

 さらには、その尊い志は仏法に生きる新たな人を生み育てることにもつながるのです。 このような意味から、包みもの(金封)の上書きには、「御経料」や「読経料」ではなく「御布施」と書くのです。


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